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    ('A`)はライ麦畑でつかまえないようです<前編>
    ('A`)はライ麦畑でつかまえないようです
    http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1197012324/


    1 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 16:25:24.20 ID:M0BI5SzD0
     5人の男女が食卓につき、
    思い思いの量のレトルトスープをパンと一緒に食べていた。

    ξ゚⊿゚)ξ「せっかくあんなに立派なキッチンがあるというのに、
          なんだってあたしたちはこんなものを食べないといけないのかしら」

     金髪の女が、不満そうにそう言った。
    4人の視線が彼女に集まる。

    (´・ω・`)「しょうがないよ、こんな状況なんだ。
         ご飯が食べられるだけ幸運だと思わないと」

     大柄な男がなだめるようにそう言うと、
    金髪の女はそれで納得したのか、文句を続けようとはしなかった。
    彼らの会話が弾むことはなく、
    スプーンやバターナイフが食器と当たる音だけがカチャカチャと鳴っている。

     やがて、痩せた男が口を開いた。

    ('A`)「これから僕たちは寝るわけだけれど、一人になるのはいかにも危険だ。
       リビングルームで全員一緒に寝ることにしないか?」

     そうだな、と大柄な男が賛意を示す。
    しかし、5人全員が賛成したわけではなかった。

    ( ・∀・)「ふざけるな! 人殺しと一緒になんか寝られるか!
          俺は自分の部屋に戻るんだからな!」

     彼らは山荘に閉じ込められていた。





    ('A`)はライ麦畑でつかまえないようです<前編> ←今ココ
    ('A`)はライ麦畑でつかまえないようです<後編>


    4 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 16:27:56.25 ID:M0BI5SzD0
     『('A`)はライ麦畑でつかまえないようです』





     僕が死のうと思ったのは、煙草がなくなったからだった。

     僕は部屋を掃除していた。
    僕のそれまで所属していた劇団が解散することになったからだ。
    人はそれぞれ気分転換の方法が異なるが、
    とても嫌なことがあって気分転換をしなければならない場合、
    僕は決まって部屋の掃除をすることにしていた。

    ('A`)「綺麗な部屋は、再出発を考えるのにふさわしいんだ」

     その気分転換の方法を馬鹿にされるたび、僕はそう言ってきた。

     僕を女手ひとつで育ててくれたかーちゃんが死んだときもそうしたし、
    先日、それまで恋人であったクーに別れを告げられたときも、
    僕は自分の部屋を入居時の状態同然になるまで掃除した。


    6 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 16:30:05.23 ID:M0BI5SzD0
    ('A`)「絶望したときは、部屋をまっさらな状態にするべきだ。
       リセットするんだよ。
       頭の中もリセットし、また1からがんばるんだ」

     そして、すべてをリセットするために、
    僕はリセットされた部屋でゆっくりと煙草を1本吸うのである。
    僕はこれまでそうやって数々の苦難を乗り越えてきたし、
    これからもそうする筈だった。

     フロアリングの床にワックスをほどこした僕は、大きくひとつ息を吐いた。
    壁にかけられたジャケットの内ポケットを探り、
    煙草の箱をそこから取り出す。

     しかし、そこには1本の煙草も入っていなかった。

     嫌いになるにはもう少しだった僕の人生に見切りをつけるには、
    それは十分すぎる理由だったわけである。


    8 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 16:32:27.44 ID:M0BI5SzD0
     死のうと思った僕がまずやったのは、
    部屋を整理して出たゴミを丁寧に分別して捨てに行くことだった。

    ('A`)「死ぬのは僕の勝手だけれど、
       それで人に迷惑をかけるのはなんとなく嫌だ」

     死に心地が悪いだろうな、と思ったのだ。
    そんなものがあるかどうかは知らないけれど、
    あった場合に困るのは、他ならぬ僕なのである。

     何種類かのビニール袋にいらないものを放り入れながら、
    電気と水道を止めてもらって今のうちに入金しておこう、と考えた。

     家具も処分しておくべきである。
    僕の生活は豊かなものとはいえないが、
    それでも人が一人生きていけるだけのものは持っている。

     何人かの友人に報告を入れる必要があるかもしれない。
    死ぬのも意外と手間がかかるな、と僕は思った。

     そして、唐突に思いついた。

    ('A`)「最後にドライブをしておこう」

     僕は幼い頃から車のことが好きだった。
    学生時代にアルバイトをして貯めた金でまずやったことは、
    中古車の購入である。

     そのとき買ったカローラにすっかり愛着をもっていて、
    それから10年近く経った今でも僕はそれに乗っていた。


    9 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 16:35:26.90 ID:M0BI5SzD0
     知り合いの工場の隅を借りて、定期的に手入れをしているのが良いのだろう。
    製造されてから15年ほど経っているにもかかわらず、
    僕のカローラは、まったく故障する素振りを見せようとしない。

     今日もカローラはご機嫌だった。
    僕が奥まで入れてかき回してやると、彼女は嬉しそうに声を上げた。

     僕は国道に出ると、道なりにひた走ることにした。
    しばらく走ると海が見えてくる予定の道だ。
    目的なしにドライブをするとき、僕は、
    決まってこの道を通ることにしている。

     僕は車が好きだけれど、車を改造するのが好きなわけではない。
    構造を知り、手入れをし、
    あとは好きな道をそれなりの速度で走ることができれば
    僕はその他に1つのことしか望まない。

     それは、音楽だ。

     僕のカローラには、一人前にCDチェンジャーがついていた。
    スピーカーも、まだ僕の恋人だったころのクーが
    誕生日に買ってくれた、BOSE製の良品だ。

     僕のカローラは美しい声色で僕に歌を聞かせてくれる。
    やがて海沿いを走るようになると、
    僕はアクセルを深く踏んで彼女と合唱した。


    10 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 16:39:28.21 ID:M0BI5SzD0
     僕とカローラの合唱に割り込んでくるものがいた。
    携帯電話だった。
    僕の携帯電話は、機械特有の空気の読めなさで
    僕たちの『傘拍子』に『ヒキコモリロリン』で割り込んできた。

    ('A`)「もうちょっとさ、曲調合わせるとかなんとかしろよな」

     僕は、そうこぼしながらも携帯電話を手に取った。
    着信元は、僕の元恋人で、
    僕の所属していた劇団のマネージャー業みたいなことを
    やっていたクーだった。

     僕は高鳴りそうになる心臓を落ち着かせようと
    大きくひとつ息を吐き、携帯電話の通話ボタンを押した。

    川 ゚ -゚)「よかった。繋がった。
         無視されたらどうしようかと思っていたよ」

     今どこにいるんだ、とクーは訊いてきた。
    僕は車を路肩に停めた。左手に海が見えている。

    ('A`)「海だ。僕は、海にいる」

    川 ゚ -゚)「泳いでいるのか?」

    ('A`)「そうだね。最近の携帯電話は便利なもんで、
       泳ぎながら話す機能もついている」

     クーが小さく笑うのが携帯電話から伝わってくる。
    何の用だ、と僕は訊いた。


    13 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 16:41:32.68 ID:M0BI5SzD0
     仕事の話だ、とクーは言った。

    川 ゚ -゚)「残念か?」

    ('A`)「残念だね。
       ある感想ブログが大好きで、
       それに取り上げられたくて短編をひとつこしらえたら
       華麗にスルーされたときと同じくらい残念だ」

     何の話だ、とクーは訊く。
    こっちの話だ、と僕は答えた。

    ('A`)「で、仕事って?」

     僕の記憶が正しければ
    劇団はめでたく解散になった筈だけど、と僕は言った。

    川 ゚ -゚)「劇団にではない」

    ('A`)「僕個人になのか?」

    川 ゚ -゚)「それも正確ではないな」

     元劇団員の何人かへの依頼だ、とクーは言う。

    川 ゚ -゚)「君とモララー、ショボンにだ」

     挙げられた名前の中にはひっかかるところがあるけれど、
    3人選ぶとすれば妥当なところだな、と僕は思った。


    14 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 16:43:31.14 ID:uaxq/nOF0
    伊坂への愛が感じられる気がする支援


    15 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 16:44:15.74 ID:M0BI5SzD0
    ('A`)「依頼主は?」

    川 ゚ -゚)「VIPテレビだ」

     なんだって、と僕は声を上げる。

    ('A`)「テレビに出られるのか?」

    川 ゚ -゚)「もちろんだ」

     これで出られなかったら驚くな、とクーは言った。

     マジかよ、と僕は呟いた。
    興奮によって体温が急上昇している。
    車の窓を開けると入ってきた冷たい風は、僕の頬に心地良かった。

    ('A`)「でも、なんで僕たちが?」

     思い出したように僕は訊く。

    川 ゚ -゚)「なんでも、本格ミステリ風のコントのようなものを撮りたいらしい。
         古典的なシチュエーションのものを大真面目にやることで、
         逆に笑えるものを作りたいとのことだった」

     知名度のない役者を使った方が
    面白いと思ったのかもな、とクーは言った。


    16 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 16:47:07.08 ID:M0BI5SzD0
     ひょっとしたら、プロデューサーか何かが
    僕たちの劇団を見て気に入ってくれたのかもしれないな、と僕は思った。
    人選が的確だったからだ。

     道は閉ざされたわけではないのかもしれない。

    ('A`)「まだ死んでなくて良かった」

     僕はそう呟いた。

    川 ゚ -゚)「なんだって?」

    ('A`)「死ぬのは、意外と面倒なんだ。
       面倒くささに乾杯だ」

    川 ゚ -゚)「どういう意味だ?
         何を言っているのかわからない」

     僕もだ、と僕は言った。
    クーは小さく笑っている。

    川 ゚ -゚)「じゃ、受けるんだな?」

     もちろんだ、と僕は答える。
    ジャケットの内ポケットから煙草の箱を取り出した。

     箱の中は、空だった。


    21 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 16:49:41.56 ID:M0BI5SzD0
     普段着で行き着替えのようなものはもってくるな、
    とのことだったので、僕はそれに従った。
    携帯電話も持っていない。
    何故か煙草も持ってくるなと言われたので、
    僕は出発前にたっぷりと吸い溜めしておいた。

     僕はカローラと合唱しながら、VIP山荘へ向かっている。

     VIP山荘は、その名の通り山の中にある。
    しかし、地図で見たところ、それほど人里離れてはいなかった。
    吹雪になったとしても、隔離されはしないだろう。

    ('A`)「ま、どっちにしろ、この季節じゃまだ雪には早いけどな」

     僕は曲の合間にそんなことを考えた。
    国道を離れ、山道に入る。
    しばらく走ったところで自動販売機が見えたので、
    僕は急にコーラが飲みたくなって、停まることにした。

     2台並んだ自動販売機の脇には、赤いビートルが停まっていた。
    僕はその後ろにカローラを停め、
    ハンドル脇の小銭入れからコーラ代を用意する。
    顔を上げると、ドアのすぐ向こうに女の人が立っていた。

     彼女はすらりと背が高く、黒のセーターが大きく前にせりだしていた。
    ストレートの長髪は見事なブロンドで、おそらく外国人なのだろう。
    黒ぶちの眼鏡の奥では緑色の瞳が僕を見つめている。

     僕が車から出ると、彼女は声をかけてきた。


    22 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 16:50:00.69 ID:+u94NfpCO
    一瞬のエロスを感じた
    これは支援せざるを得ない



    26 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 16:52:50.20 ID:M0BI5SzD0
    ハハ ロ -ロ)ハ「Hi.」

     彼女は綺麗な発音で僕に挨拶をした。
    英語だ。
    外国人は積極的だな、と僕は思った。

     ハイ、と僕が返事をすると、彼女は早口で何かをまくしたててきた。
    僕は小さく舌打ちし、ヘイ、とそれを遮った。

    ('A`)「Speak Japanese or more slowly.
       You're in Japan.」

     日本語で喋らないならゆっくり喋れ、ここは日本だ、と
    僕は彼女に言ってやる。
    彼女は小さく息を呑み、眼鏡の奥からすがるような目を向けてきた。

    ハハ ロ -ロ)ハ「The key is in my locked car.
           What shall I do ?
           (鍵を車に閉じ込めちゃったの。
            私、どうすれば良いのかわからないわ)」

    ('A`)「Call JAF. Do you have a cellphone ?
       (JAF呼べよ。携帯持ってねーの?)」

     ノー、と彼女は答えた。
    すがるような視線はどこへやら、眉間に皺が寄っている。

    ハハ ロ -ロ)ハ「But I do know JAF. Don't you have a cellphone ?
           (でもJAFは知ってるわ。あんたこそ、携帯くらいもってないの?)」


    28 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 16:55:15.53 ID:M0BI5SzD0
     余裕がないからなのだろうが、彼女の態度は妙に刺々しかった。
    それに伴い、僕の応対も刺々しいものになる。
    ノー、アイ、ドント、と僕が突き放すように答えると、
    オーウ、と彼女は両手で頭を抱えて天を仰いだ。

    ('A`)「そういうリアクションって、誇張表現じゃないんだな」

     僕はそう思っただけだった。

     がっくりと肩を落とした彼女をよそに、僕は自動販売機でコーラを買った。
    やはりコーラは缶に限る。
    ペットボトルは邪道なのであり、
    僕はペットボトルでしかコーラを売らない種類のコンビニを憎悪している。

     僕がカローラに戻ろうとすると、
    外国人の女がドアを塞ぐように立っていた。

    ('A`)「Get out of my way.(どけよ、邪魔だ)」

    ハハ ロ -ロ)ハ「Come on. Don't tease me.
           Your mom must've told you to give a hand to the miserable.
           (ねえ、いじわるしないでよ。
            かわいそうな人は助けてやれってお母さんに言われなかった?)」

    ('A`)「She's gone.」

     かーちゃんなら死んだよ、と僕は言った。
    彼女を手で押しのけると、僕はカローラに乗り込んだ。


    29 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 16:55:33.90 ID:tR++RnNKO
    しえん
    樹海の人?


    30 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 16:57:12.45 ID:M0BI5SzD0
     僕がカローラに挿入したところで、助手席側のドアが開き、
    外国人の女が乗り込んできた。

    ('A`)「What fuck are you doing ?」

     何乗ってんだ、と僕は彼女を睨みつける。
    たくましいもので、彼女は僕に笑顔を見せてきた。

    ハハ ロ -ロ)ハ「Would you mind bringing me to somewhere ?
           (お願いよ。どこか乗せてって)」

     僕は大きくひとつ息を吐いた。
    コーラを開け、一口飲み、ドリンクホルダーに立てかける。
    僕は面倒事が嫌いなのだ。

    ('A`)「Where is somewhere ?(お前さ、どこかってどこだよ)」

    ハハ ロ -ロ)ハ「Hm, central city or somewhere with a phone at it.
           (だから、街中とかさ、電話があるとこよ)」

    ('A`)「戻んのかよ」

     面倒くせーな、と僕が呟くと、
    オア、と彼女は言った。

    ハハ ロ -ロ)ハ「Vip cottage, my goal.
           (それか、VIP山荘ね。私、そこに向かってるの)」

     お前もかよ、と僕は呟いた。同業者なのかもしれない。


    34 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:00:23.96 ID:M0BI5SzD0
     同じ仕事に関わる以上、
    少しは親しくなっておいた方が何かと良いのかもしれない。
    そう思った僕は、車を発進させながら彼女に話しかけることにした。

    ('A`)「I'm Dokuo, going to the cottage too.
       (僕はドクオ。行き先は一緒だ)」

    ハハ ロ -ロ)ハ「Wow. I'm Hallow. Let's come together.
           (マジで。私はハロー、よろしくね)」

     『私はおはようございます』と脳内変換された後、
    そんなわけないな、と僕は考え直した。

    ('A`)「Your name is Hello ?(ヘローってあんたの名前?)」

    ハハ ロ -ロ)ハ「Yeah, but not "HELLO," "HALLOW."
           (そうよ、でもその発音だと『おはよう』になっちゃう。
            私はハロー、HALLOWさん)」

    ('A`)「Halloween?(ハロウィンのハロー?)」

     イエース、とハローは親指を立ててみせる。
    一瞬、ぶん殴ってやりたくなった。



    38 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:03:28.89 ID:M0BI5SzD0
     僕のようなろくに異文化交流をしたことのない人間にとって、
    外国人といえばアメリカ人に決まっている。
    しかし、ハローは英国人だった。

    ハハ ロ -ロ)ハ「I'm from England, Liverpool.」

     ハローは僕にそう言った。
    リバポー、と彼女の口から発せられるのを訊いた瞬間、
    僕は脊髄反射で飛びついた。

    ('A`)「Steven Gerrard ?(ジェラードの?)」

    ハハ ロ -ロ)ハ「Yeah ! Michael Owen !(そうそう、オーウェンの)」

     このやりとりを境に、僕の彼女に対する印象はがらりと変わった。
    オーウェンはもはやリバプールにいないけれど、そんなことはどうでも良い。

     マージーサイドダービーってどんな雰囲気なの、と
    僕のサッカーに関する情熱をぶつけると、
    ハローは母国の誇りをもってそれに対応する。
    僕たちの話は弾み、
    ドリンクホルダーに立てかけられたコーラがなくなる頃には
    すっかり旧知の仲のようになっていた。


    42 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:06:39.41 ID:M0BI5SzD0
     僕たちを乗せたカローラは、意外なほど山中深くまで進むことになった。
    地図で見た限りではそれほど遠くないと思っていたのだが、
    どうやら僕の思い違いだったようだ。

     カローラは僕の好きなバンドの歌を歌っている。
    帰国子女がボーカルで、主に彼が作詞を行うバンドだ。
    彼の英語は帰国子女らしいフランクな文法で構成されていて、
    歌詞を見れば、僕レベルの英語力でも容易に間違いが発見できる。

    ハハ ロ -ロ)ハ「There's something wrong.
           (歌詞、間違ってるわね)」

     だから、ハローにそう言われたときも、僕はそれほど意外ではなかった。

     僕のカローラはそのとき『おとぎ』を歌っていた。
    その英語の歌詞の1部分を拾い、
    ハローは得意げになって僕に文法的な誤りを指摘する。

    ハハ ロ -ロ)ハ「They said "we've gave from birthday,"
           which should be "we've given from birthday."
           (たとえば"we've gave from birthday"って歌われてるけど、
            ちゃんと書くなら"we've given from birthday"にしないとね)」

     日本人であるせいか、僕には英語における文法的な誤りが
    どの程度重要なものなのかわからない。
    意味が通じるのだからそれで良いとも思えるし、
    僕の母国語である日本語にしても『ら』抜き言葉が深く浸透している。

     言葉はそれ自体が生きているものなのだ。
    文法や語法などというものは、僕たちが勝手に考えているに過ぎない。


    45 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:09:07.23 ID:M0BI5SzD0
    ('A`)「That's not wrong, exceptional.
       (それは間違いとはいわない。破格っていうんだよ)」

     僕はハローにそう言った。
    マシンガンのような反論が襲いかかってくるかと思っていたのだが、
    意外にもハローは僕に笑いかけてきただけだった。

    ハハ ロ -ロ)ハ「That's right. I just tried teasing you.
           (それで良いのよ。ちょっとからかってみたくなっただけ)」

     ハローはそう言い、
    その歌詞の狙いであろうポイントなどを色々と説明してくれた。
    僕の英語は十分なものではないので、
    ちょっと専門的な内容になっただけで単語がわからなくなってしまう。

    ハハ ロ -ロ)ハ「You got it ?(わかった?)」

     だから、ハローにそう訊かれたときも、
    僕は曖昧に頷くことしかできなかった。
    なんとなく気恥ずかしくなって、僕は話題を変えることにした。

    ('A`)「I thought foreign actresses had their secretaries with them.
       (つーかさ、マネージャーとかって付いてくるもんじゃねーのかよ)」

    ハハ ロ -ロ)ハ「Not necessary.」

     別に決まってるわけじゃないし、と彼女は笑う。

     僕たちを乗せたカローラはVIP山荘に到着した。


    46 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:12:26.69 ID:M0BI5SzD0
     山荘の入り口には、ショボンがぽつりと立っていた。
    『VIP山荘』と書かれた看板に寄りかかるようにしてこちらを見ている。

     僕は彼に近づくと、窓を開けて挨拶した。

    ('A`)「おう。何してんの?」

    (´・ω・`)「おでむかえ。何、新しい彼女?」

     ショボンは窓から覗き込むようにしてハローに小さく手を振った。
    ハローも手を振ってそれに応じる。
    そんなわけないだろ、と僕は言った。

    ('A`)「出演者なんじゃないの。
       さっきそこで拾ったんだ。ここに行くって言っていた」

    (´・ω・`)「外国人?」

    ('A`)「見ればわかるだろ」

    (´・ω・`)「うん。
         でも、山荘にはバリバリの巻き巻きの金髪なのに
         ネイティブジャパニーズな女の子がいるからね」

     ふーん、と僕は中途半端な声を出す。
    ふと思いつき、煙草もってないかと僕はショボンに訊いてみた。

    (´・ω・`)「持ってないよ。持ってくるなって言われたろ?」

     だよね、と僕は呟いた。


    48 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:15:26.47 ID:M0BI5SzD0
     ショボンは断りなしにカローラの後部座席に乗り込んできた。

    ('A`)「何? どっか行くの?」

    (´・ω・`)「うん、駐車場にね。
         ここの駐車場には、駐車上の注意があるんだ」

     ショボンはそう言い、小さく笑った。
    僕からは苦笑いしかでてこない。
    ハローが僕たちのやりとりを不思議そうに眺めていたが、
    いちいち英訳したりはしなかった。

     ショボンのナビゲートに従って駐車場に辿りつくと、
    そこには見慣れないベンツが停まっていた。
    つまり、僕たち劇団員ではない人物のものなのだろう。

    (´・ω・`)「あのメルセデスから離して停めるんだ」

     ショボンは後部座席から身を乗り出し、
    Sクラスのベンツを指さしながらそう言った。

     なんで、と僕は素朴な質問を口にする。

    (´・ω・`)「爆発するからさ」

     ショボンは当たり前のことのようにそう言った。


    51 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:18:04.40 ID:M0BI5SzD0
     爆発するんだ、と僕は呆けたような声を出した。
    それを聞いたショボンは笑い、
    車は爆発するもんだ、と格言を引用するような口ぶりで言った。

     なになに、とハローが好奇心いっぱいの目を向けてくる。

    ('A`)「That car will explode.(あれ、爆発するんだって)」

     僕はベンツを指さしながらそう言った。
    ワーオ、とハローが少し興奮した声を出す。
    それを聞き、ワーオ、とショボンが少し興奮した声を出した。

    (´・ω・`)「英語だ、すげー。洋モノだ!」

    ('A`)「洋モノゆーな」

    (´・ω・`)「いやー、僕はじめてだよ。
         名前何ていうの? What's your name ?」

     ショボンは身を乗り出してハローにそう訊いている。
    やがて名前を聞き出したショボンは、
    ハローね、ハローさん、と何度か呟いていた。

    (´・ω・`)「I'm Shobone. Glad to meet you, Ms Hollow !
         (僕はショボン、よろしくハローさん!)」

     これであってるかな、とショボンは僕に訊いてきた。
    たぶんね、と僕は返事する。
    ハローはそのやりとりが少し気になっているようだった。


    54 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:21:08.76 ID:M0BI5SzD0
    ('A`)「He said he's erecting.(こいつ、勃起しちゃったってさ)」

     だから、僕はショボンを指さしてそう言った。
    ワーオ、とハローがニヤ笑いを浮かべてショボンを横目に見る。

    (;´・ω・`)「なに? え、なに?
          ドクオ、君、何言ったのさ」

    ('A`)「うん。気に入ったみたいだったから、
       代わりに告っといてやったよ」

    (;´・ω・`)「それは嘘だろ。本当は何を言ったんだ」

     僕はショボンの追求をはぐらかしながら、
    空いているスペースの中で最も安全だと思われるところに駐車した。

     車から降りても、ショボンはまだオタオタしている。

    ('A`)「英語、勉強しといた方が良かったな?」

     僕はニヤつきながらそう言った。
    ショボンは僕を睨みつけている。

    ('A`)「ヒントをやろう。彼女は今、お前のどこを見てるかな?」

     ハローは、明らかにショボンの股間を見ていた。

    (;´・ω・`)「お前、マジ何言ったんだ!」

     僕とハローは顔を見合わせ、大いに笑った。


    56 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:24:04.67 ID:M0BI5SzD0
     無事にショボンの名誉を挽回した僕たちは、
    VIP山荘へ向かう前に、爆発する予定のベンツを観察することにした。

    ('A`)「爆発ってさ、いつすんの?」

     僕は窓から車内を覗き込みながらそう言った。
    運転席の革張りのシートは何の変哲もなかったが、
    このベンツには助手席がついていない。

    (´・ω・`)「あれだよ。殺人事件が起こって一同騒然、
         俺はここから出て行くぞパターンだ」

    ('A`)「ああ、キー回したら爆発、ってやつ?」

    (´・ω・`)「そうそう。
         だから、ここで死ぬのはこのメルセデスの持ち主ってことになるね」

     誰かはまだわからないけど、とショボンは言った。

    ('A`)「そいつはどうやって脱出すんの?」

    (´・ω・`)「助手席がないだろ。
         よく見ると、底が扉になっている」

     車内を指さし、ショボンは言った。
    再び注意深く見てみると、わずかに取っ手のようなものが見えている。

    (´・ω・`)「あの下には、マンホールのように穴が開いているんだってさ。
         キーを回したら30秒後に爆発するから、
         回した人は素早く穴を伝って逃げるように、とのことだった」


    59 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:26:30.63 ID:M0BI5SzD0
     山荘にはモララーとクーがいた。
    僕の元友人と、元恋人だ。
    挨拶をしてきたので、僕も彼らに挨拶を返した。

     このツーショットを改めて目の当たりにしているにもかかわらず、
    僕は意外と普通だった。

     モララーが声を上げると、奥から女の人が出てきた。
    バリバリの巻き巻きの金髪である。
    僕は思わず隣のハローと見比べた。

    ξ゚⊿゚)ξ「こんにちは。あなたがドクオさん?」

     そうだ、と僕は頷く。

    ξ゚⊿゚)ξ「Ms Hallow ?」

     イエス、とハローは頷いた。

    ξ゚⊿゚)ξ「あたしはツン。よろしくね。
          じゃ、揃ったことだし、
          これからやってもらうことを説明します」

     僕たちはツンに促されるままソファに腰掛けた。
    なかなか座り心地の良いソファだった。


    61 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:29:18.56 ID:M0BI5SzD0
     概要は話されてると思うけど、とツンは言った。

    ξ゚⊿゚)ξ「これはテレビの収録です。
          といっても、カメラマンはいません。
          この山荘には至るところに隠しカメラが設置されていて、
          それによって撮影が行われます」

    ( ・∀・)「ふーん。
          でも、それじゃ、あまり撮影っぽくありませんね」

     燃えないな、とモララーが言う。
    そうですね、とツンは答えた。

    ξ゚⊿゚)ξ「燃える必要はありません。
          というか、あまり迫真の演技をされても困ります」

     モララーが身を乗り出した。
    なんでですか、とツンに訊く。

     モララーはかなりやる気になっているようだった。
    僕もそうである筈なのに、彼のやる気満々な様子をみると、
    しおしおとやる気が萎えていくのが自分でわかる。

    ('A`)「ひょっとして、あなたも参加するんですか?」

     僕が控えめにそう訊くと、
    そうです、とツンは小さく頷いた。

    ξ゚⊿゚)ξ「あたしとクーさんは役者ではありません。
          演技力に差がありすぎると興ざめになるかもしれないのです」


    63 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:32:27.13 ID:M0BI5SzD0
     ちょっと待て、とクーが声を上げた。

    川 ゚ -゚)「わたしも参加するのか?」

    ξ゚⊿゚)ξ「そうですよ。そう説明しませんでしたっけ」

    川 ゚ -゚)「わたしは、ここに同行しろとしか言われていない」

    ξ゚⊿゚)ξ「では手違いですね」

     あなたにも参加してもらいます、とツンは言った。

     彼女の事務的な口調はクーの反論を許さない。
    クーは何か言いたそうにしながらも口をつぐみ、
    助けを求めるようにモララーを見た。

     モララーは、クーの視線に構わず
    部屋中を眺め回し隠しカメラを探している。
    おそらく、自分の最も映えるアングルで振舞えるように、
    位置を把握しておきたいのだろう。

     やがてモララーを諦めると、クーは僕に視線を向けた。
    僕はそれを受け止め、しかし何も言わずにソファに深く腰掛ける。

    ξ゚⊿゚)ξ「クーさん、構いませんね?」

     ツンはクーにそう言った。
    クーは僕から目を逸らすと、力なく頷いた。


    64 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:35:51.44 ID:M0BI5SzD0
    (´・ω・`)「ミステリ的なものを撮るとのことでしたよね」

     僕たちを包む気まずい空気を吹き飛ばそうと思ったのか、
    ショボンが発言して話題を変えた。
    そうですよ、とツンは頷く。

    (´・ω・`)「つまり、僕たちは何人か殺され、
         誰かが犯人になるというわけだ」

     ショボンは全員の顔を見渡しながらそう言った。
    モララーが思い出したように声を上げる。

    ( ・∀・)「探偵役もいるってことだ。
          探偵役は、主役だ。
          それは誰がやるんですか?」

     もちろん俺でしょ、といわんばかりの口調でモララーはそう言った。
    モララーが期待一杯にツンを見ていると、ツンは首を横に振る。

    ξ゚⊿゚)ξ「探偵役はこの後来ます。
          主役は彼で、あなたたちは流れにまかせて動いてもらいます」

     なんだよ、とモララーは足を放るようにしてソファに身を沈めた。

    (´・ω・`)「流れにまかせて、とはどういう意味なのでしょう」

     ショボンはツンにそう訊いた。


    65 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:39:07.96 ID:M0BI5SzD0
    ξ゚⊿゚)ξ「そのままの意味です。
          あなたたちに台本はありません。
          役作りのようなものも、あなたたちに任せます」

    (´・ω・`)「それは、無責任ではありませんか」

    ξ゚⊿゚)ξ「そうは思いませんね。
          そのために、
          あなたたちのような経験豊富な劇団員を選んだのですから」

     ツンは突き放すような口調でそう言った。
    言いたいことは山ほどあるだろうが、ショボンはそれきり口を開かない。

     僕はショボンの代わりに質問をすることにした。

    ('A`)「じゃあ、どうやってストーリーは進んでいくんだ?」

    ξ゚⊿゚)ξ「それはもちろん、人の死によってです」

     ミステリですから、とツンが言う。
    僕たちはそれぞれ曖昧に頷いた。
    なんとなく理解はできるけれど、
    こんな説明で納得できる人間はこの世にいない。

    ('A`)「それは、誰に殺されるのかな」

    ξ゚⊿゚)ξ「それも流れで決まります。
          探偵が推理して、犯人だと思った人が犯人です」

     ミステリですから、とツンは言った。


    68 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:41:28.68 ID:M0BI5SzD0
    ( ・∀・)「なんだよ、
          テレビってのはこんなにいい加減なもんなのかよ」

     どっちらけだな、とモララーが毒づいた。
    ツンはモララーに構わない。

    ξ゚⊿゚)ξ「探偵役は、内藤ホライゾンです」

     ツンは僕たちにそう言った。
    ほう、と僕の口から声が漏れる。
    内藤ホライゾンは知名度のある俳優だ。

    ('A`)「『名探偵ブーン』の?」

    ξ゚⊿゚)ξ「そうです」

     ふーん、と僕は曖昧な声を出した。
    様々な感想が生まれているのだけれど、
    それらはうまく言葉にならない。

    (´・ω・`)「『名探偵ブーン』シリーズは打ち切られましたよね?」

     ショボンは訊きにくいことをあっさり訊いた。


    72 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:43:21.25 ID:M0BI5SzD0
     そうですね、とツンは簡単に頷いた。

    ξ゚⊿゚)ξ「『名探偵ブーン』シリーズは打ち切られました。
          視聴率の低下が原因です」

    ( ・∀・)「本格ミステリなんて、今日び流行りませんからね」

     ツンはわずかに感情のこもった目でモララーを睨みつけた。

    ξ゚⊿゚)ξ「そうですね。だから、今回は特別編のようなものです。
          本格ミステリは古い題材ですが、
          その古い題材をネタにすることはできます」

     あまり趣味の良い話ではないな、と僕は思った。

     ツンの説明はあらかた終わったようで、
    僕たちはそのまま内藤ホライゾンの到着を待つことになった。

     ツンはハローと英語で話しあっている。
    今の説明をやり直しているのだろう。
    ツンの英語は、僕のなんちゃってイングリッシュとは
    比べ物にならないほど流暢で、
    僕は近くに座っていながらほとんど聞き取ることができなかった。

     途切れ途切れにしか聞き取れない英語の中で
    僕の興味をそそったのは、"RADWIMPS"という単語だった。
    彼女たちの話はそれなりに盛り上がっているようで、
    ツンも彼らが好きなのかな、と僕は少し親しみを感じた。


    73 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:46:32.15 ID:M0BI5SzD0
     僕はツンに断り、キッチンに入った。
    コーヒーを飲みたかったのだ。
    VIP山荘のキッチンには、豆挽きのコーヒーメーカーが備え付けられていた。

     コーヒーメーカーには電動ミルが付属している。
    それとは別に、レトロな手動ミルが脇に置かれていた。
    僕は手動ミルとコーヒー豆を手に取ると、
    椅子のひとつに腰掛けてコーヒー豆を挽くことにした。

     様々なことをぼんやり考えながらハンドルを回していると、
    キッチンにクーが入ってきた。

    川 ゚ -゚)「座っても良いかな」

     自分から声をかけない僕にそう言って、
    クーは僕の傍に腰掛けた。

    ('A`)「そういうのは、普通、返事がくるまで待つもんだ」

     そうだな、とクーは言った。
    僕は豆挽き作業に集中する。

     やがて豆を挽き終わると、僕はコーヒーメーカーにフィルタをセットし、
    その上に挽いた豆ををばらまいた。
    ミネラルウォーターを求めて冷蔵庫を開けると、
    そこには飲み物以外何もはいっていなかった。


    75 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:48:12.76 ID:M0BI5SzD0
    ('A`)「不自然だろ」

     僕はそう呟いた。
    クーはその呟きを聞きつけたのか、
    椅子に座ったまま身をねじって僕の方に向いてきた。

    川 ゚ -゚)「いや、自然だろう。
         山荘モノでは立派なキッチンでレトルトスープというのが定番だ」

     確かにそうだな、と僕は頷いた。

    ('A`)「に、してもさ。別にあっても良い筈だ」

     僕はコーヒーメーカーにミネラルウォーターを注ぎ込んだ。

     お前も飲むかと訊いたら飲むと返ってきたので、
    僕はコーヒーカップを2つ食器棚から持ってきた。
    僕たちは1つのテーブルにつき、
    お互い黙々とコーヒーカップを口に運んでいる。

     おそらくクーは、僕が彼女を助けなかったことに対する
    文句でも言いに来たのだろう。
    しかし、クーは、自分からそのような話をはじめられない種類の人間だ。

     僕がクーの恋人であったならば、
    うまく彼女の不満を吐き出させてやったことだろう。
    実際はそうでないので、僕はそうしようとしなかった。


    76 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:51:43.15 ID:M0BI5SzD0
     しばらく時間が経った後、
    どうすれば良いんだ、とクーは言葉を吐き出した。
    何が、と僕は訊き返す。

    川 ゚ -゚)「わたしは演技なんかできないよ。
         しかし、収録には参加しなければならない。
         どうすれば良いのかわからない」

     僕は大きくひとつ息を吐いた。
    ひとたび余計なことを言い始めたら、
    きっと僕は止まらなくなってしまうことだろう。

    ('A`)「じゃあ、さっさと死ねば良い」

     だから、僕はシンプルにそう言った。

    川 ゚ -゚)「なんだって?」

    ('A`)「ああ、別に喧嘩を売ってるわけじゃない。
       お話的に、ってことだよ。
       ストーリーは僕たちの行動で変わるみたいだし、
       さっさとフェードアウトしてしまえば良いだろ」

     なるほど、とクーは頷いた。

    川 ゚ -゚)「でも、どうやって?」


    78 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:54:14.67 ID:M0BI5SzD0
    ('A`)「この話には、僕たちの予想できないことが多すぎる」

     僕はクーにそう言った。
    クーは真剣に僕の話を聞いている。
    それは僕にとって快感で、
    きっとまだこの女が好きなんだろうな、と僕は少し苦笑した。

    ('A`)「殺害方法もわからない以上、
       僕たちにストーリーを先回りした行動を取ることは現状不可能だ」

    川 ゚ -゚)「そんなことは、わたしにもわかる。
         どうすればわたしは死ねるのだ?」

    ('A`)「ひとつだけ、明らかになっている殺害方法がある」

     僕がクーにそう言うと、車か、と彼女は呟いた。

    ('A`)「そうだよ、爆発するベンツだ。
       最初の殺人がいつ、どのように起こるかはわからないが、
       2番目の殺人はわかる」

     あの車だ、と僕は言った。
    クーは小さく頷いた。

    ('A`)「ストーリーを流れで決める以上、
       どの役割になるかは早い者勝ちだ。
       お前はあの車の持ち主になり、キーを回して死ねば良い」


    81 :名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/07(金) 17:57:00.23 ID:M0BI5SzD0
     大きくひとつ息を吐いた後コーヒーを飲み干し、
    ありがとう、とクーは言った。

    川 ゚ -゚)「なるべく早く死ぬようにするよ」

    ('A`)「そうしろ。車に乗った後どうすれば良いのか知ってるか?」

     知っている、とクーは答えた。
    お節介だったかな、と僕は小さく苦笑する。

     コーヒーを飲み終えた僕たちがリビングルームに戻ると、
    ドアの前にツンが立っていた。
    僕はひどく驚いた。

    ξ゚⊿゚)ξ「今、呼びに行くところでした。
          もうじき内藤ホライゾンが到着します」

     ツンは僕たちにそう言った。
    リビングルームには全員が揃っている。
    ツンは5人を見渡すと、大きくひとつ息を吐いた。

    ξ゚⊿゚)ξ「内藤ホライゾンが入ると共に撮影は開始します。
          NGなどによる撮影の中断はありません。
          すべてはあなたたちにかかっています。
          良いものを撮りましょう」

     ではよろしくお願いします、とツンは早口でまくしたてる。
    心なしか、皆の表情に緊張のようなものが生じている。

     山荘の扉が開かれた。











    続きます → ('A`)はライ麦畑でつかまえないようです<後編>
  •  | 2ちゃん;ネタ | 【2007-12-08(Sat) 15:52:05】 | Trackback:(0) | Comments:(1)
    コメント

    不思議のダンジョンのひとっぽいな
    2007-12-08 土 23:10:55 | URL |   #- [ 編集]
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